ヒューマン三重では、専業分野に特化した会社や組織で活躍できる技術者の養成に取り組んでいます。製造業やテクノロジー業界では、事業の集中化を進めた専業系が資本収益性・成長性の両面で優位に立っています。複数の事業モデルを保有する総合系企業を圧倒しています。ヒューマン三重は、21世紀の専業化時代のリーダーとなる人材づくりに励んでいます。

IT業界の世界的な変革

アメリカ

アメリカでは、1980年代後半~1990年代にかけ、パーソナルコンピュータとネットワーク機器市場の拡大で、IT業界が大きく変化しました。現在でも時価総額大手であるIBM、モトローラ、アップル・コンピュータが、それぞれ異なる大きな変革を進める一方で、マイクロソフト、インテル、シスコシステムズ、コンパック、デルなどが新たに台頭してきました。新たな技術・市場の拡大によってそれぞれの業態で専業化が先行したのが米国です。経営効率が低い状態を株主が容認しない市場であったことも、既存企業の大胆な経営判断と新興企業の台頭をもたらした背景にあると推測されます。

欧州

日本と近い企業文化を持つ欧州・ユーロ企業も、1990年代には変革が始まり、ネットバブルを受けて、変革が加速しました。携帯電話への経営資源集中で欧州テクノロジー企業の代表となったフィンランドのノキア、コンテンツ事業の売却→キーデバイスへの投資→半導体事業の売却と進むオランダのフィリップス、半導体・携帯電話の売却などを断行した独シーメンスなど、大胆な経営構造の転換を行なった例は数多くあります。経営効率の高い事業へと集中することで、欧州企業の業績は今、着実な回復トレンドになりました。

アジア

一方、アジア企業は、日米欧の企業と比較すると、大変革期の1990年代になってから国際市場における地位を獲得し始めたため、当初から得意な領域に特化したビジネスモデルとなっているケースが多くなっています。

かつては、比較的低コストだが質の高い労働力と、国を挙げての産業支援によるメリットを生かすだけのアジア企業でしたが、現在は多くの企業が先端テクノロジーを用い、グローバル市場で重要なレイヤー(領域)を担うまでに成長しています。半導体メモリやLCD(液晶ディスプレイ)などの汎用デバイス、ファウンドリ・アセンブリング(製造専門会社による組み立て加工)など、すでにアジア企業なしでは世界のテクノロジー産業は成立しえない状況となっているのは周知のとおりです。

日本のテクノロジー業界の再編

日本の他産業を見ると、大半の基幹産業において、買収・合併などがバブル崩壊以降の1990年代から現在にかけて進行しました。鉄鋼・化学といった素材産業、自動車、金融、医薬品など異なる事業モデルを有するそれぞれの産業が、収益性アップへ向けた経営効率改善のため、再編へと動きました。現在、日本企業の業績は過去最高レベルとなり、株式市場活況の主因となったのも業界再編と無縁ではありません。

これに比べて、テクノロジー産業のコア企業はどうでしょうか。重電・家電・情報機器/サービス・通信機器・半導体・電子部品・FPD(薄型ディスプレイ)など、テクノロジー関連事業全般を抱える総合系企業が依然として存在します。人員や設備規模の維持という経営の前提を崩せないからでしょう。だが、それでは、収益性を向上させ、事業を持続的に成長させることなど不可能ではないでしょうか。

SCM(サプライチェーン管理)の簡素化

事業の維持・継続・強化という経営判断は、事業の撤退・売却などのそれに比べれば、容易に選択されやすいものです。撤退・売却には短期的損失やイメージ悪化を伴うからです。大半の日本企業は、相対的に低下した国際競争力再構築のため、人員削減やSCM(サプライチェーン管理)の簡素化、海外生産の加速・垂直統合型モデルの形成、などに取り組んできました。これは、ネットバブル以降のROIC改善となっており、一定の成果を否定するつもりはありません。

コア事業強化

ただ、問題なのは、こうした対症療法では国際的な相対競争力の改善につながっていないことです。経営判断として重要なのは、(1)自社の持つコア事業の冷静かつ適切な価値評価、(2)コア事業が国際競争のなかで勝ち残るだけのリソースを持っているかどうかの判断、(3)ノンコア事業についてスムーズに撤退・売却を行なってコア事業強化に結び付ける実行力、であるとわれわれは考えます。

こうした大胆な経営判断とその実行が、日本の総合系企業からアクティブに起これば、それが契機となって、業界全体に波及する可能性も十分にあります。

「再発防止型」から「予防安全型」へ

リスクアセスメントが、産業用機器の枠を超えて消費者向け機器の分野にも広がりつつある。富士ゼロックスのように、事故の連鎖を根本から食い止めたいと考えるメーカーが増えているからである。

工場での重大事故

そもそも、なぜ産業用機器の分野でリスクアセスメントがここまで重視されるようになったのか。それはやはり「再発防止型」から「予防安全型」に移行するためである。工場などでの事故件数は、全般的には減少傾向にある。しかし、その中身をつぶさに調べてみると、重大事故の件数はあまり減っていなかった。業界も行政も、従来の「再発防止型」のアプローチには限界を感じており、リスクアセスメントに望みを懸けたのだ。同じ悩みを抱える消費者向け機器の分野でもリスクアセスメントを採用する動きが広まっているのは、ある意味では必然といえる。

構造化知識研究所

技術優位性などの経営資源

日本企業は、国際市場で必要不可欠な存在であり、資本力や資金調達力・技術優位性などの経営資源もあります。こうした経営資源が国際競争力を失う前に、過去のしがらみや資本関係などに縛られない、大胆な経営判断に基づく積極的な「変化」が期待されているところです。

ハードウエアでの参入障壁が低下

主力商品であるテレビが技術革新が進んだAV機器業界は、対象となる市場が日本国内に限定されず、グローバルな競争にさらされています。その一方で、最終ハードウエアでの参入障壁が低下したことで、製品単価が大きく下落しています。

欧米ではほぼ2~3社に集約化

電化機器も欧米ではほぼ2~3社に集約化され、生き残った企業が高い収益性を実現している一方で、日本は7社がほぼフルラインで製品展開しており、今後、事業の集約化が必要となるでしょう。また、半導体・ディスプレイデバイスは、すでに一部を除いて国際競争力が大きく低下しつつあり、激しい競争が続く市場環境のなかで経営資源の集中化が急務と考えます。

高い技術レベルとクオリティの高い労働力

国際競争の視点から見た場合、日本は人件費や実効税率が高く、コスト上の不利は否定できませんが、一方で、高い技術レベル、クオリティの高い労働力、巨大な日本国内市場、有利かつフレキシブルな金融市場、など優位性もあります。

専業化へのシナリオ

大手総合系企業が、短期的なコスト(人員・設備・社会的評価など)にとらわれず、戦略的買収・売却などを経て得意分野へと専業化していくことが、日本のテクノロジー業界復権へ向けた最も効果的なシナリオと考えます。