ホットリンクの成長の軌跡

ブログ開設サービス

2000年に創業したホットリンクは、急激に利用者を増やしていた個人の日記「ブログ」サービスを始めた。大手通信会社やメーカーと提携しながら最先端システムを開発した。IT業界で注目を浴びた。

サイト案内用のキャラクター

2002年には、ホームページ上を案内する対話型キャラクターの提供サービスも始めた。

いわば「バーチャル案内人」の派遣サービスだ。顧客企業のホームページ上に愛らしいキャラクターが登場し、企業の紹介やサイトのナビゲート、アンケート、営業代行などを行う仕組み。

企業は利用申し込み後に、キャラクターにしゃべらせたいセリフや動作を設定できる。ネット利用者を自社の宣伝や説明へとスムーズに誘導できるメリットを謳った。

また、アンケートの回答率アップやホームページ訪問者とキャラクターの対話による上位商品のお勧めなど、通常のテキスト文やバナーのみの告知では消費者に敬遠されがちなことでも、嫌みなく受け入れられるというメリットがあった。

広告配信

初期のホットリンクはこのほか、ネット上の仮想都市での広告配信など、多様なサービスを手掛けた。

口コミ分析・風評被害・誹謗中傷監視サービスに参入(2006年)

ホットリンクはその後、口コミ分析サービスに参入した。ツイッターやブログ等のソーシャルメディア(SNS)上の情報を収集してソリューションを提供する会社へと転換したのだ。

その第一弾として、2006年11月からネット上の口コミ収集を始めた。2500万人のブログ情報や、誹謗中傷サイトとして有名「2ちゃんねる」などの投稿や記事を蓄積した。

SNS分析ツール「クチコミ係長」

集めたデータを活かして、SNS(ソーシャルメディア)分析ツール「クチコミ係長」を開発した。

クチコミ係長では、キーワードを入力するだけで様々な角度の分析を瞬時に行うことができた。

例えば、商品名で検索すると、口コミ投稿者の性別、商品の種類(機種)、投稿内容などが一覧で表示された。

独自に開発した人工知能の技術によって実現したという。

こうして、大量情報をリアルタイムで分析し、今後の動向を予測する技術を磨いた。

金融業界向けサービスへ進出(2012年)

2012年には、金融機関向けの風評・口コミ分析サービスに参入した。ブログやツイッター、2ちゃんねる掲示板などネットの情報を収集し、金融機関にリスク管理やマーケティングなど目的別に分析した情報を提供し始めた。

株価予測の実験

金融機関向けのサービス開始に先立ち、ホットリンクではある実験を行った。実験では、過去3年分の日経225先物のデータとクチコミ係長のブログ記事情報との関係性を人工知能に学習させ、株価を予測した。

運用益が72%上昇

そのうえで、実際に人工知能の判断に応じて2千万円を運用してみた。その結果、7カ月で運用益は72%上昇したという。

投資顧問の子会社を設立

さらに、2011年11月に投資顧問(投資助言・代理業)を行う子会社「ホットスコープ」を設立した。ファンド事業を展開した。

また、今後はIT投資に限界がある金融機関に代わって、大量情報を瞬時に分析するサービスも請け負うことにした。投資顧問業では、自社グループが抱える以下の技術を活用した。

  • (1)予測アルゴリズム
  • (2)言語解析エンジン
  • (3)ビッグデータ処理技術
投資家向けの販売戦略に応用

投資顧問サービスにより、金融機関側はホットリンクの分析結果をもとに未来を予測し、投資家向けの情報提供や販売戦略などに応用することが可能となった。

経営者の失言ツイートで株価急落も

当時、TwitterやFacebook、Youtubeが急激に普及し始めていた。その結果、SNSの影響力が強まっていた。さらに、経営者の失言ツイートが原因で数日後に株価が大暴落するケースが増えていた。

内山社長は「SNS界のブルームバーグになり、金融界に革命を起こす」と意欲を語っていた。

API版のクチコミ@係長

さらに、分析ツールを自社システムに組み込みたいという金融機関のニーズに応えるため、「クチコミ@係長API」の普及にも取り組んだ。

炎上や風評被害を監視する「イーマイニング」

また、ホットリンクは、炎上や誹謗中傷、風評被害を監視する「イーマイニング」を開発した。

企業名などを事前登録し、ネット上に書き込まれる誹謗中傷やレビューを監視する。サイト炎上のリスクのある表現を早期発見し、企業の担当者に知らせる仕組みだ。

ネット選挙ビジネス

ホットリンクにとって大きな商機となったのが、ネット選挙運動の解禁だった。

2013年7月の参院選でインターネットによる選挙運動が解禁された。候補者がフェイスブック(交流サイト)などのソーシャルメディアで発信できるようになった。動画配信やネット世論分析などの事業に取り組む企業が出てきた。

ホットリンクは当時、ツイッターの無数のつぶやきなど、膨大な情報(ビッグデータ)の分析サービスを手掛けていた。

ツイッターの全データのほか約3200万件のブログや、掲示板の書き込みを収集、分析できるツール(仕組み)を、インターネットを通じて政党に提供していた。ツールを使えば、ほぼリアルタイムで民意を把握することができ、選挙戦略に活用できた。

とはいえ、政党数も限られるため、市場規模は大きくなかった。

自民党が有権者リアルタイム分析

2013年7月の参院選では、自民党やみんなの党がホットリンクのサービスを利用したという。自民党は有権者動向のリアルタイム分析などに活用したようだ。

日立システムズと提携

「2ちゃんねる」風評被害やクレームを監視

ホットリンクは2013年10月、日立システムズと提携した。協業により、2chやTwitterなどからリスク情報を発見する風評監視サービスを始めた。

日立システムズの新サービスでは、リスク情報を発見し、毎日報告する。価格は初期費用が10万5000円で、月額利用料が10万5000円だった。風評監視サービスを利用することで、以下のリスク情報が発見できるとした。

(1) 誹謗中傷・風評被害
(2) クレーム
(3) 情報漏えい
<日立の風評監視サービスの料金表>
初期費用 10万5000円
月額利用料 10万5000円

クラウド型

サービスはネットワーク経由で利用するクラウド型で提供した。

ホットリンクの検索システムでインターネット上を巡回する。同時に、各種サイトから顧客が指定したキーワードが掲載されているページを発見する仕組みだった。

ホットリンクは掲示板サイト「2ちゃんねる」データの企業向け商用利用の独占権を取得していた。2ちゃんねる内のデータ検索も可能だった。

企業がウェブ上のリスクを早期に発見し、対処できるようにした。

マザーズに株式上場(2013年12月)

2013年12月9日、ホットリンクは東証マザーズに株式新規上場(IPO)を果たした。

上場時の事業セグメント

<ホットリンク事業の柱>
部門 内容
コンサルティング ブログやTwitter、2ちゃんねるなどの各種ソーシャルメディア上のデータを分析することで、製品やサービスの反応、消費者ニーズの調査・分析を行う。
風評リスク監視 企業の風評被害(炎上)や情報漏えいを効率的に発見する。

強みは「国内最大データ量」

2ちゃんねる(2ch)投稿内容の独占商用利用権

上場時、投資家の間でホットリンクの最大強みと受け取められたのは、「2ちゃんねる」のデータの独占的商用使用権を保有していることだった。2chは当時、日本最大の掲示板サイトだった。膨大な数の誹謗中傷が日々行われていた。10分置きに最新データを受信していた。

2ちゃんねるからすると、ホットリンクが払う契約料が最大の収入源になっていたようだ。

Twitterのデータ利用権

また、Twitterについてもデータ利用権を取得していた。「全世界」「全言語」「全期間」という広範な権利だった。

Twitterのデータは、世界最大のソーシャルデータ提供会社である米GNIP経由で調達していた。

一方、GNIPはホットリンクが提供する日中韓3カ国語の言語解析エンジンを使っていた。

そのエンジンを使って、当該3カ国語のツイートデータを全世界に供給していた。

当時、ツイートの2割は日本語だった。

<ホットリンクのTwitterのデータ利用権>
対象の範囲 全世界、全言語、全期間
調達ルート 米GNIP経由

以上の理由から、ホットリンクは「ソーシャルメディア分析の日本最大手」を標ぼうしていた。

当時IT業界では、IBMやNTTデータなど大手がソーシャル・ビッグデータ分析事業へ参入の動きを見せていた。しかし、圧倒的なデータ保有量と処理能力といった点から、ホットリンク社の優位性があると考えるアナリストもいた。

<ホットリンクの提携企業>
米国Gnip社 Twitterの過去の全データの再販権を持つ世界で2社のうちの1つ。日本市場における独占的な販売代理契約を取得していた。
2ちゃんねる 2ちゃんねるデータの独占的商用利用権および2006年から蓄積されたブログデータを保有した。

国内ビッグデータ市場

国内ビッグデータ市場は高成長市場だった。しかし、分野ごとに有力プレーヤーが異なっていた。

具体的には以下の分野があった。

(1) データ保有者
(2) データ解析者
(3) 解析エンジン
(4) ITインフラ

以上のように分野が細分化されていたため、当時はまだビッグデータでもうけている企業は少なかった。しかし、ホットリンク社は各分野を横断的に扱っていた。このため、大きな成長が期待された。

評判分析ツールの販売状況

上場時のホットリンクの最大の収益源は、評判分析ツールの販売だった。

<評判分析ツールの導入状況(上場時点)>
累計顧客企業数 2500社
利用が多い業種と目的 小売り企業のマーケティング

OEM供給

ホットリンクの評判分析ツールはOEM(相手先ブランドによる生産)でも展開していた。

以下の企業が、ホットリンクのツールに自社ブランドを付けて、それぞれのクライアントに提供していた。

  • 電通
  • 凸版
  • NRI
  • 日立システム
  • ネットイヤーの子会社トライバルメディア
  • サイバーエージの子会社サイバー・バズ

販売パートナー

さらに、以下の企業が販売パートナーに名を連ねていた。

  • 電通
  • オプト
  • ガイアックス
  • イーガーディアン

主力商品は「クチコミ@係長」

ホットリンクの評判分析ツールの中で、主力商品となっていたのは「クチコミ@係長」だった。

<「クチコミ@係長」とは>
中身 ソーシャルメディアの分析ツール
機能 日々投稿される情報をリアルタイムに収集する。
役割 CMなどの訴求力を可視化する。
導入企業の累計 600社
特徴 テレビやネットニュースの露出数との相関を見るクロス分析機能。通常のネット調査や対人調査では把握することのできない時系列での反応量を確認可能とした。

金融分野での応用例:情報ベンダーのブルームバーグ社が、ホットリンク社のデータを元にした株価予測システムを活用していた。

IPOの条件や株式の魅力

ホットリンクのIPOには割安感はなかった。収益水準がまだ低かったためだ。ただ、高PERが許容される可能性があるとの予想が多かった。

<ホットリンクIPOの概況(上場直前の2013年12月5日時点)>
上場日 2013年12月9日上場
公募価格 2700円
公募価格のPER 49倍
公募株数 18万8800株
想定された時価総額 約47億円
資金吸収額 最大13億8500万円
資金調達額 4億8500万~6億6500万円
筆頭株主 内山幸樹(上場前37.84%)
上場前資本金 2億7973万円
発行済み株式数 168万6000株(上場前)
主幹事 野村証券
<ホットリンク同業他社の当期予想PER>
トレンダーズ 43倍
ブレインパッド 1117.8倍
イー・ガーディアン 25.3倍
クロス・マーケ 14.2倍
オプト 39.3倍

初値は公開価格2.7倍の7170円

ホットリンクは上場初日は初値が付かなかった。

上場2日目に公開価格2700円の2.65倍となる7170円で初値を形成した。

2013年12月9日、マザーズに新規上場したホットリンク(3680)が、上場2日目となる2013年12月10日、売買が成立。初値は公開価格2,700円の2.7倍となる7,170円。

一方、オプト(2389)は2013年12月24日、連結子会社だったホットリンクの上場に伴い、約10億円の特別利益を計上すると発表した。

「目視」加えた監視サービス

ホットリンクは2014年3月、ネットパトロール分野でガイアックスと提携した。

提携により、ロボットによる自動監視だけでなく、「目視」加えた監視サービスを始めた。ネット炎上の「火種」を見つけるモニタリングを行った。ホットリンクのデータ分析に、ガイアックスの強みである「人間によるチェック」をプラスした。

炎上の火種を判定

ホットリンクは2000サイト1200万ページ以上のネットメディアを日々巡回していた。しかし、ネット上には特有の用語が氾濫(はんらん)するため「火種」の判断が困難だった。

そこで、累計500社のサイトを24時間365日体制で監視するガイアックスと提携することになった。ネット用語などを熟知する専門家による目視での監視を組み合わせたのだった。

米国企業買収(2014年11月)

中国版Twitter「新浪微博(シナウェイボー)」のデータ入手

さらにホットリンクは2014年11月9日、米Effyisを2200万ドル(約24億6000万円)で完全子会社化すると発表した。

米Effyisは、中国版ツイッターと呼ばれる「新浪微博(シナウェイボー)」のデータに対するフルアクセス権の販売ライセンスを持つ世界唯一の企業だった。

この買収により、中国での炎上リスク検知・監視サービス参入が可能となった。Effyisは黒字企業ながら直近四半期末で債務超過状態だった。